今日は
営業の現場でわりと「できる人っぽく見える行動」について、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
テーマは、「話をまとめてあげる営業って、本当に成約に近づいているのか?」という話です。
営業経験がある方なら、一度はこんな場面に出くわしたことがあると思います。
お客様の話を一通り聞いて、頭の中で情報を整理してから、スッとこう言う感じです。
「つまり、今の課題はここですよね」
「この状況なら、この商品が一番合いそうです」
はい。
一見、とてもスマートです。
場の空気も締まりますし、「この人、分かってるな」という評価ももらいやすいです。
僕自身も、昔はわりと得意げにやっていました。
でもですね。
今日はその“できる営業っぽさ”の裏側にある、ちょっとした落とし穴について書いてみたいと思います。
① 話をまとめてくれる営業は、なぜ評価されやすいのか
まず前提として、話をまとめてくれる人って、基本的にありがたい存在です。
会議でもそうですよね。
話があちこちに散らばっているときに、
「今の話を整理すると、こういうことですよね」と言ってくれる人がいると、正直ホッとします。
営業の場でも同じです。
お客様は忙しいですし、頭の中も整理しきれていないことが多いです。
そんな中で、
・状況把握が早い
・要点を抜き出せる
・提案が分かりやすい
こうした要素を持っている営業は、どうしても「優秀」に見えます。
これはもう、人間の自然な感覚だと思います。
なので、「話をまとめてあげる営業=悪い」という話ではありません。
ただし、です。
ここに、少しだけ注意したいポイントがあります。
② その整理、本当に「相手の答え」でしょうか
話をまとめるとき、営業側は無意識に「自分の視点」で整理をしています。
これはもう避けられません。
なぜなら、営業は営業の立場で話を聞いているからです。
商品知識もありますし、過去の成功事例も頭に浮かびます。
すると、どうなるか。
「このケースなら、だいたいこうだろう」という仮説が、かなり早い段階で出来上がります。
ここで一度、立ち止まりたいです。
その整理された答えは、
お客様自身がたどり着いた結論でしょうか。
それとも、営業側が“代わりに出してあげた答え”でしょうか。
ここ、意外と見落とされがちです。
お客様はたしかに「分かりました」と言ってくれます。
でもそれは、「理解した」という意味であって、「納得した」とは限らないのです。
たとえばですね。
誰かに地図を見せられて、「ここが目的地です」と言われるのと、
自分で曲がり角を確認しながらたどり着くのとでは、感覚が違います。
場所は同じでも、到達の仕方が違います。
この差は、意外と大きいです。
③ よくある営業アドバイスが生む、静かな違和感
営業の世界では、こんなアドバイスをよく聞きます。
「お客様の課題を整理してあげましょう」
「分かりやすく提案することが大事です」
どちらも、間違ってはいません。
むしろ、正論です。
ただ、このアドバイスをそのまま真面目に実行すると、
お客様の“考えるプロセス”を、丸ごと飛ばしてしまうことがあります。
営業が話をまとめる。
営業が結論を出す。
営業が「最適解」を提示する。
お客様は、聞いているだけ。
これ、冷静に考えると、ちょっと不思議な構図です。
決断するのはお客様なのに、思考は営業が担当している感じになります。
すると、お客様の中に、こんな気持ちが生まれやすくなります。
「言っていることは分かるけど…」
「悪くはないと思うけど…」
この「けど…」が、なかなか曲者です。
強い反対はされません。
でも、前にも進みません。
営業側からすると、一番モヤっとする瞬間かもしれませんね。
④ 人は「自分で出した答え」にしか、本気で動けない
ここで一つ、大事な前提の話をします。
人は、自分で考えて、自分でたどり着いた答えに対して、強くコミットします。
これは心理学的にもよく言われていることです。
ものすごくざっくり言うと、
「自分で決めたことは、守ろうとする」という性質です。
たとえば、ダイエットです。
他人に「痩せた方がいいよ」と言われるより、
自分で体重計に乗って「あ、これはまずい」と思った方が、行動に移りやすいです。
営業も、これと似ています。
・自分で状況を整理して
・自分で課題に気づいて
・自分で必要性を感じる
このプロセスを通った結論は、多少不完全でも、行動につながりやすいです。
遠回りに見えるかもしれません。
でも、結果的には一番の近道だったりします。
⑤ 「説明する営業」から「考えてもらう営業」へ
では、どうすればいいのか。
ここで出てくるのが、
「説明する営業」から「考えてもらう営業」への視点の切り替えです。
うまくいっている営業は、
実は、話をきれいにまとめる人ではありません。
考えられる“場”をつくる人です。
質問を投げかけて、
少し視点をずらして、
お客様自身が気づくのを待ちます。
沈黙が生まれることもあります。
正直、ちょっと怖いです。
でも、その沈黙の中で、お客様の頭はちゃんと動いています。
この時間が、あとで効いてきます。
「自分で考えて決めた」という感覚は、
契約書にサインするときの背中を、そっと押してくれます。
⑥ とはいえ、まとめたくなる気持ちも分かります
ここまで読んで、
「じゃあ、何も言わない方がいいのか」と思った方もいるかもしれません。
それは、たぶん違います。
話をまとめたくなるのは、相手を思ってのことです。
時間を無駄にしたくない気持ちもあります。
なので、全部を我慢する必要はありません。
大事なのは、タイミングと順番です。
先に答えを渡すのか。
それとも、考えたあとに整理するのか。
この順番が変わるだけで、結果はかなり違ってきます。
⑦ というわけで、今日の面談を少し振り返ってみてください
というわけで、最後に一つだけ。
今日の面談や商談を、軽く振り返ってみてください。
あなたは、答えを渡していましたか。
それとも、考えてもらっていましたか。
どちらが良い、悪いという話ではありません。
ただ、その違いが、これからの成果を静かに分けていく気がしています。
少し立ち止まる。
少し待つ。
それだけで、営業はもう一段、楽になるかもしれません。